ブルースハープのベンドする力学について(リード長手方向分布荷重の強制振動)

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2016/4/27追記※ブルースハープのベンドについては,当ブログの「ブルースハープ ベンド その 『 原理 』について」をお読み頂く方がわかりやすいかと思います。

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〜〜〜この記事よりも、もう少しマトモな記事を書いてありますので、このパラグラフのテキストにリンクしている記事をお読み下さい〜〜〜

テキストを読む時間が無い方は、このパラグラフのテキストにリンクされている動画をご覧下さい。

一般にブルースハープ(図1)と呼ばれている十穴ハーモニカは、3オクターブをカバーする楽器である。

なお、ブルースハープというのは、あるメーカの商標なので、一般名詞である十穴ハーモニカやダイアトニックハーモニカと呼ぶべきであるが、教則本を見ても、ハーモニカメーカに関わらずブルースハープと呼んでいるので、この記事でも慣習に従い、ブルースハープとする。


図1ブルースハープの例(Tombo Major Boy)

しかし、ドレミファソラシドが揃っているのは1オクターブのみである。キーがCの吹音と吸音の並びを図2に示す。図2の穴の番号の4〜7は1オクターブ揃っているが、穴の番号1〜3はファとラ(FとA)抜けであり、穴の番号8〜10はシ(B)抜けである。

図2 ブルースハープの音の並び(キーC)

では、3オクターブをどうやって演奏するかと言うと、主に、穴の番号1〜3は吸い方で、穴の番号8〜10吹き方で、図2示す音よりも低い音を出す。例えば、穴の番号3は普通に吸えばシの音しか出ないが、吸い方で、シ♭、ラ、そして、ラ♭の音を出すように演奏する。穴の番号10は、吹くとドの音だが、吹き方でシの音を出す。

そのように、穴の番号1〜10までを吹き吸いすると、半音毎に3オクターブをカバーできる。

普通に吹き吸いする音よりも低い音を出すことは、ベンドと呼ばれる。特に、吸音による場合は、ドローベンドと呼ばれ、ブルースの演奏には欠かせない演奏技術である。

そして、ブルースハープを手にして初心者(つまり、私自身)の最初で恐らく最大の難関がこのドローベンドである。

なぜなら、普通に吸っても音が下がらないのだ!!

ブルースハープの教則本の解説は、ベンドに多くを充てている。

しかし、不思議なことに、ベンドに関する力学的な考察と言うのは、あまりない。というか、私がササっと探した限り、ネットや教則本には書かれていない。

なので、ベンドができるようになったら、その力学的なことが気になりだしたので、考えてみた。

なお、ここでの考察は、アイデアというか、イメージなので、ベンドの数学モデルを提示できるまでには至っていない。

ハーモニカは、リードを振動させて音を出す楽器である。

ブルースハープの吹音のリードは上にある(図3)。そして、吸音のリードが下にある(図4)

図3 ブルースハープの吹音リード(上側)

図4 ブルースハープの吸音リード(下側)

ハーモニカのリードは、材料力学的には、片持ちハリとしてみなせると考えられるので、普通に鳴らす時に出る音は、ハリの曲げ一次振動である。ハーモニカのカバーを外して、リードを針で持ち上げて自由振動させたときに、クロマチックチューナーで音程を確認すると、曲げ一次そのものの音程を共鳴無しで出ている(ハーモニカはカバーが共鳴器である)。

この時の空気の流れを、リードとハーモニカのボディ(図1、3、および4の黒い部品)の断面として考えると、ハーモニカの穴を吸った場合には、図5のように空気が流れる。


図 5 ハーモニカを普通に吸ったときの空気の流れ

図5で起きている現象は、ボディとリード自由端の間の隙間がスロートとなっているイメージである。流体力学の有名なベルヌーイの法則から、スロートでは圧力低下を起こす。そして、リードは、わずかなソリ(アゲミと呼ばれる)があり、スロートでの圧力低下とアゲミによって、自由振動が起きる。これが、普通に吸ったときの現象である。このことは、ヤマハの音楽全書にハーモニカの原理として解説がある

しかし、ヤマハの解説のみでは、ベンドの原理はわからない。

ベンドの説明として、吸うと、上側のリードがなるという説明を見かける。しかし、カバー無しで、上側のリードを指で動かないようにしても、吸うとベンドは起きる。また、1番の穴の吹音のベンドにより、半音低いシの音を出すことが可能であるが、ベンドにより上下反対側のリードが鳴るという説明からは、この現象を力学的に説明できない。

つまり、吸音のベンドは、下側のリードで、吹音のベンドは上側のリードで起きる現象と考えられる。

そして、ベンドの不思議なところは、ある音程の範囲において、周波数が連続的に変化することである。ハーモニカの普通の音程は、リードの曲げ一次共振周波数により決まるので離散的である。

しかし、例えば、3番号穴の吸音ベンドは、シ〜ラ♭さらに、ソ近くまで変化する。それを、演奏者が、調整する。それが難儀なのである。

ここで考えてみる必要があるのは、ベンドにより出す音程は、リードの曲げ一次共振よりも低い音(周波数)ということである。

ハリの共振周波数の計算式を知っている人ならば、曲げ一次よりも低い周波数に、ハリの共振周波数がないことは知っているはずである。

と、なれば、曲げ一次共振周波数よりも低い周波数において、かつ、連続的に周波数が変化する現象は、どのようなことがかと考える必要がある。

そう考えて、カバーを外したハーモニカを吸ったり吹いたりしていてイメージしたのは、図6のような現象である。


図 6 ベンドのときにリードに負荷される荷重(圧力)のイメージ

図5と6の違いは、リードの根元(固定端)から先端(自由端)まで空気が押し上げるかどうかというイメージの差である。

ベンドをすると、リード(片持ちハリ)の板厚方向に根元から先端まで圧力がかかり、まさに、リードを曲げる(ベンド=bend)。その曲げ方により、リードに強制振動が起きる。

最初は、カルマン渦による振動ではないかと考え、スロートを流れる空気のレイノルズ数を計算してみたが、せいぜい、数十〜数百のオーダーであり、カルマン渦が影響しそうではない。

図6のリードへの圧力のかかり方は、ハリの分布荷重による強制振動発生とみなすことができる。これであれば、リードの曲げ一次共振周波数よりも低い周波数において、連続的に周波数が変化する現象の説明にはなりうる。

これを実験的に評価しようとするならば、レーザー振動計により、リードの変形を直接観察することが有効であろうが、まさか、私が個人でそんなものを持っているわけもなく、実験のしようがない。

これで、なんとなくベンドの力学的なイメージはできたので、安心して練習ができる。

なお、考察が間違っていたら、ぜひ、ご指摘並びにご教示のほど、お願いします。

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COP21の合意は科学の問題か?いや、政治経済の問題である。

地球気候変動(私は地球温暖化とは言わない)に関するCOP21が、21世紀末までに、地球平均気温を工業化前の2 ℃以下にするという合意に至ったらしい(日経電子版記事:COP21合意 「痛み」を成長に生かす発想不可欠:日本経済新聞

恐らく、そこで協議されたのは、温室効果ガス排出量を漸減させると言うことなのであろう。

日経の記事も多くはそこを書いている。

地球気候変動に関しては、素人であるが、温度というキーワードを示されると、輸送現象論や流体力学を学んだ者としては、どうしても気になってしまう。

特に気になるのは、地球気候変動という問題が、科学の問題なのか?、と、言うことについてである。

地球気候変動問題から、一旦離れて、人類が可能な気象現象予測のState-of-the-artsを考えてみる。

すると、地球全体の気象現象予測が可能な未来は、気象庁の数値予報の7日ー10日程度である。それでさえ、台風や冬の爆弾低気圧が発生すると、その動きの予測は、もっと短い時間になってしまう。

数値気象予報に使われている数学モデルは、流体力学と熱力学および水の相変化を基礎式として、観測データを初期条件と境界条件として利用するモノであろう。

地球全体の数値気象予報のメッシュは、確か20 kmごとだったと気象庁のHPに紹介されている。

日本の数値気象予報技術は、恐らく世界の最先端と信じているので、これが、21世紀前半に生きる人類のState-of-the-arts と考えられる。

一方、地球気候変動問題は、数十年という長い未来の、『地球平均気温と呼ばれるスカラー量』を予測する必要がある。

そのような数学モデルが容易に構築し得るのであろうかと思うと、やはり困難であるらしく、地球シミュレータの研究は、大気であったり海洋であったりを様々な要素に分けて数学モデル構築が模索されている状況のようだ。

また、もっと簡単に考えてみると、地球気温変動問題について、地球大気をオープン制御系として捉え、目標値を地球平均気温、制御値を温室効果ガス排出量としたときに、どのような制御系が考えられるかと言うと、恐らく最も単純なシステムは、過去の温室効果ガス排出量と地球平均気温の相関グラフから、21世紀末までを、温室効果ガス排出量をパラメータにして外挿することであろう。

恐らく、この単純な制御系モデルが誰にでも理解されやすい地球気候変動問題であろうと思う。

しかし、この単純化した制御系モデルは、大気中の炭素循環と呼ばれる、大陸と海洋の炭素固定量変化が制御因子にならない。

また、人為的な温室効果ガス排出量は主に二酸化炭素を指す。しかし、メタンの方が、温室効果が高いことはよく知られていることである。すると、シベリアなどのツンドラ地帯の凍土が夏期に溶融し、メタンを排出しているはずであるが、このメタン排出を人為的に制御可能なのか、大いに疑問である。

すると、COP21において、人為的な温室効果ガス排出量だけに規制を作っても、地球気候変動問題を制御可能なのか、疑問を抱かず得ない。

何を言いたいかと言うと、地球気候変動問題に対しては、温室効果ガス排出量規制だけではなく、少なくとも、二酸化炭素については、大陸と海洋の炭素固定量を増やす必要があるであろうということである。

それは、具体的には、熱帯雨林の再生、海洋海藻コロニー再生、そして、大陸の砂漠(都市を含む)の緑地化を進めることである。

これは、温室効果ガス排出量と地球平均気温の単純な制御系モデルにおいて、排出量と地球平均気温の相関関係を変化させることになる。温室効果ガス排出量と地球平均気温の制御系をPID制御系として簡単化すれば、炭素の大陸と海洋の固定量増加は、積分要素と微分要素を増加させることに相当する。

しかし、先の日経の記事にしても、地球気候変動問題について語られるのは、温室効果ガス、特に、化石燃料による二酸化炭素排出量規制に矮小化されている。

結局、地球気候変動問題は、科学の問題ではなく、人が使えるエネルギーをどうするかという政治経済の問題になっており、それは、誰も得をしないような大陸と海洋による炭素固定量増加というお金と労力がかかる作業から目を逸らしている。

地球気候変動問題を議論するのであれば、人が焼畑や放牧を始めた頃から行ってきた、地表面の環境破壊から議論されるべきであろうと思う。

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