ブルースハープ ベンド その 『 原理 』について

1.ブルースハープ ベンド の 原理とは?ブルースハープの穴の中の圧力がハーモニカケースの外の圧力よりも低く(吸音時)または高く(吹音時)することにより,リードを湾曲させることのより,リードが変形しやすくなり(曲げ剛性が下がる),リードの共振周波数が低くなることが,ベンドの原理である。

 

図1 吹音側リード

図2 吸音側リード

図3 吸音側リード詳細1

図4 吸音側リード詳細2(一番穴吸音側リード:アゲミに注目願いたい)

2.リード振動のモデル:リード振動は片持ちはり振動である。プラスチック定規によりそのモデルを示す。

 

 図5 プラスチック定規による片持ちはりの例

片持ちはりは一般に以下のような変形をする。

図6 片持ちはりの一般的な変形(自由端集中荷重による)

片持ちはりの振動の例を以下に示す。

動画1 片持ちはりの振動の例

3.ベンドしたときのリードの変形:ベンドの際リードは以下のような湾曲した変形が生じる。

図7 ベンドのときのリードの変形

図7を少し解説すると,吸音リードは,全体として,ハーモニカ穴の中に引き込まれる(口の中の圧力がハーモニカケース外の圧力より低いため)。しかし,リードのアゲミにより,リード先端(自由端)は,図7のように(少し極端であるが),開いた状態を維持する。それは,ちょうど,リードをわざと変形させたような状態である(図8)。

図8 リードをわざと湾曲させたリード

湾曲させたリードはその共振周波数が低くなる(曲げ剛性が低下するためである)。

動画2 湾曲させたリードによる擬似ベンド

4.吸音ベンドをどのように行うか?お腹を凹ませて口の中の圧力を下げることにより,図7の変形が起きる。どのくらい起きるかというと,3番穴の吸音ベンド(ドローベンド)によりB→A♭になる。周波数でいうと,495 Hzから413 Hzまで変化させる。ただし,リードの変形は無段階に生じるから,圧力変化を練習により制御できるようにならなければならない。意図的にお腹を凹ませれば,自然と口の中の圧力は下がり,ベンドが起きる。

図9 3番穴吸音(ベンドなし:486.3 Hz)

図10 3番穴吸音ベンド(408.8 Hz)

図9と図10の周波数の差は16%に及んでいる。これを動画により例示すると以下の動画3になる。

 動画3 ブルースハープ3番穴の吸音ベンド(ドローベンド)による音の周波数変化

5.吹音ベンドをどのように行うか?:吹音ベンドは,吸音ベンドとは逆に,穴の中の圧力を,ハーモニカケース外の圧力よりも高めて,吹音側リードを変形(湾曲)させる。そのための最もわかりやすいイメージは,風船を膨らませるときのように、お腹を膨らませて,さらに,頰も膨らませるようにすることである。そうすることより,口の中の圧力が高くなる。10番吹音側リードを例にすると,C→B♭(2093 Hz→1864.7 Hz)の周波数変化をさせることになる。これは,11%の周波数変化になる。

図11 10番吹音(ベンドなし:2085.7 Hz)

図12 10番吹音ベンド音(極端にベンドさせるとAまで下がる:1810.5 Hz)。

なお,図12はかなり極端にベンドをさせた場合であり,安定して発音することは難しい。

これを動画により示すと動画4のようになる。

動画4 ブルースハープ10番穴の吹音ベンドによる音の周波数変化

以上

備考:本ブログ記事のために使用したクロマチックチューナーは以下のようなものである。

 iPhone APP KAWAI製クロマチックチューナ: https://itunes.apple.com/jp/app/kawai-chuna/id714823553?mt=8

ブルースハープ練習は,実利的に「腹筋のエクササイズ」であるということ:

ブルースハープを練習し始めた頃,1日に,2時間くらい練習していた。

しかし,今は,精々,15分,長くても30分を超えることは,滅多にない。

理由は,ブルースハープの練習は非常に疲れるからである。

 

練習をし始めたころは,4〜10番穴を使って練習していた。それだと,下の楽譜に掲載されていて,知っている(つまり声で歌える)曲は,なんとなく演奏できる。

入門から名曲まで ブルースハープベスト選集
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デプロ

 

 

ところが,上の楽譜集は,原曲の1オクターブ上として記載されている。実音で演奏しようとすると,4〜10番穴ではなく,1〜7番穴を使って演奏することになる。

ブルースハープ,特にキーCのハープは常識外れの楽器である。なぜなら,ドレミファソラシドのチューニングの基音となるべきラ(A)の音(特にA=440 Hz)が普通に出ない。3番穴の吸音によるベンド(ドローベンド)をしないと,440 Hzの基音が出ない。

 

さらに,キーC(ハ長調)の曲を演奏しようとすれば,和音は,C(ドミソ),G(シレソ),および,F(ドファラ)に含まれる音が頻発する。しかし,ラは上記の通り3番穴のドローベンドであるし,ファ(F)は2番穴のドローベンドにより出す。

 

一方,ソ(G)の音は,2番吸音と3番吹音の二カ所から出すことができる。和音奏法ではなく,メロディーだけを演奏する場合には,どちらを使うかは,演奏者の考えによる。

最近の私の練習では,ソ(G)の音は,2番吸音による出す練習をしている。そうなると,ミファソは全て2番穴となる。しかし,ソとラが続くメロディーは少なくない。

その例が,「仰げば尊し」である。そのメロディーの出だしは「ミミファソラソミレミファラソ(あおげばとおとしわがしのおん)」。

これは,ベンドの練習には最適なメロディーなのであるが,これを,3回も演奏していると,お腹が痛くなる。お腹というより,腹筋である。

気のせいかと思っていたが,毎回そうだ。

他の曲を混ぜて(1〜4番穴しか使わない曲ばかり)練習していても,やはり,腹筋が痛い。

なぜだろうと思って,ベンドの力学などどいうものを考えたのである(過去記事:『ブルースハープのベンドの力学的考察〜その3〜』)。

 

この腹筋をかなり使うブルースハープの練習というのは,言ってみれば,「腹筋のエクササイズ」ということになるのではないかと思うのが,この記事を書いた動機である。

 

腹筋運動を15分継続するというのは,結構キツイことである。しかし,ブルースハープを演奏するためには,腹筋を使わざるを得ない。好むと好まざると,ベンドをするためには,腹筋を使うのである。

そこで,「仰げば尊し」の演奏の2バージョンの動画を作ってみた。

・バージョン1は4〜7番穴を使う場合である。

・バージョン2は1〜4番穴を使う場合である(ソは2番吸音)。

バージョン2はかなりキツイ息使いをしている。息使いというか,腹筋使いである。特に,ソ(G)とラ(A)の行き来は苦しい。腹筋の使い方が異なるためだ。
腹筋運動としてのブルースハープ『仰げば尊し 2バージョン』

 

ブルースハープというのは,どうも,そういう楽器であるらしい。

ブルースハープのベンドに関する力学的考察〜その3〜

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2016/4/27追記※ブルースハープのベンドについては,当ブログの「ブルースハープ ベンド その 『 原理 』について」をお読み頂く方がわかりやすいかと思います。

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ブルースハープというのは,機械工学,特に,振動や波動を主に扱う私のような者からすると,とても興味深い楽器である。振動や波動に専門的に関わりだしたのは大学4年生からであり,仕事にするようになってからでも29年ほど経つ。

 

私が関わってきた機械的な振動や波動の周波数範囲は,比較的広くて,0.2 Hz〜5 MHzまでは仕事の中で扱ってきた。これだけ周波数範囲が広いと,剛体振動もあれば,構造物の弾性振動,さらに,超音波の伝播までとなり,機械工学的に扱う周波数帯域はほとんど網羅する。

しかし,ブルースハープを真剣に練習し始めてみると,その音階を出す原理に驚かずにはいられない。

メロディを奏でる楽器の音は,普通,弦の振動か管の振動である場合が多い。弦楽器は当然,弦の振動であり,音階(周波数)を決めるのは,

弦の長さ,線密度,そして,張力である。ヴァイオリンやギターの音階は,これらの三つの物理量により決まる。ピアノは「鍵盤楽器」とも言われるが,実際には,ピアノ線をハンマで叩く弦楽器である。

管楽器は木管楽器のフルートやオーボエなどと,金管楽器のトランペットやトロンボーンに区別されるが,音階を決めるのは,空洞共鳴周波数を決定する管の長さになる。

しかし,ハーモニカは音階を「片持ちはり」の共振周波数により決める。ここで,機械振動や材料力学になじみのない方のために補足すると,「片持ちはり」の「はり」は漢字で書くと「梁」である。木造建築は,上下に立つ「柱」と柱と柱を水平方向につなぐ「梁」の組み合わせにより構造が成り立っている。木造構造物の梁は両端が固定されている(両持ちはり)。一方,片持ちはりとは,一端だけが固定されていて,もう一端は自由に振動できるモノをいう。つまり,家の梁を真ん中で切断した状態である。ハーモニカのリードを「梁」と表現することを怪訝に感じる方もいるかもしれない。片持ちはりの英語は”Cantilever(カンチレパー)”である。

楽器の音階を作り出すのに片持ちはりを使用するのであれば,普通に考えると,一音ごとに共振周波数の異なる片持ちはり(リード)を並べる。それが,最も簡単な設計だからである。実際,小学校の音楽に使われるハーモニカは,そのような設計になっている。

しかし,ブルースハープという楽器は,一つのリードを使って複数の音程を出すことが必要な楽器である。片持ちはりの振動を知っている者からするれば,これは常識外れである。「教科書に書いていないこと」である。例えば,私が大学で使った振動・波動の教科書は下の本であるが,片持ちはりの共振周波数の計算の方法は書いてあっても,それを,音楽を奏でるように変化させるようなことは書かれていない。

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ブルースハープは以下のような外観をしている。吹き吸いする穴の位置に1〜10の番号が刻印されている。

穴が10個であるが,ブルースハープは3オクターブをカバーする。穴が10個で吹音と吸音で20の音階となるが,これでは,3オクターブをカバーしきれない。ブルースハープをほとんど練習せずに演奏すると,出ない音程がたくさんある。何も知らずに吹き吸いすると出る音は,以下の通りである。下の五線譜において,8vaとは1オクターブ下の音階として表示していることを表す。


これを,ベンドと言われる演奏技術を利用して,少なくとも,以下の音階を出せるように練習する必要がある。この場合,穴番号1〜4の吸音のベンドと,10番の吹音ベンドが必要である。特に,2番については,その吸音はソ(G)であるが, ソ♭(G♭),ファ(F)まで半音ごとに1音の音階を出せるようになる必要がある。

また,3番吸音は,普通にはシ(B)であるが,シ♭(B♭),ラ(A),さらに,ラ♭(A♭)と,一つの穴の吸音により1音半の音階を刻むことが必要である。

一方,10番の吸音はラ(A)であるが,吹音はド(C)である。そのため,間のシ(B)は吹音により音階を作り出す必要がある。

ブルースハープはキーごとにハーモニカを使い分ける。キーがCとAmであればCのものを,GとEmであればキーがGのものを言った具合である。つまり,ブルースハープを使ってメロディーを演奏する場合には,一般的な平均律の音階ではなく,各キーに転調したドレミファソラシドとして演奏することになる。

TOMBO トンボ 10ホールズハーモニカ メジャーボーイ 1710C
キーC(ハ長調用)
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TOMBO トンボ 10ホールズハーモニカ メジャーボーイ 1710G
キーG(ト長調用)
TOMBO

しかし,どのキーのブルースハープを使おうとも,ベンドという奏法から逃れることはできない。

そのため,ベンド奏法については様々なことが言われている。しかし,ハーモニカメーカのホームページを閲覧してもベンド奏法の力学的原理は掲載されていない。そして,教則本を見ると,『舌を丸めろ』とか『口の形を変える』などということが書かれていたりする。

平松悟氏の教則用DVD『ブルースハープの嗜み』はとてもわかり易い教材である。

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しかし,平松悟氏のベンドについての説明においても,舌の使い方を工夫することに重きが置かれている。そして,その前に口をクチャクチャやってみて とも,言っている。 平松悟氏の助言の通りに舌の使い方を工夫すると,1〜4番の吸音によるベンド(ドローベンド)をできるようになる。しかし,平松悟氏も,ベンドの原理を説明しているわけではない。

また,1〜4番のベンドができるようになっても,出せる音階が制限されることには変わりはない。

前置きが長くなった。この記事を読みたいと思った方は,ベンドを早く身に付けたいと考えている方が多いであろう。そうであれば,ベンドの原理を理解して,それに合った手法を試みるべきである。

※『ベンドとは,ハーモニカの穴を吹く,または,吸う時に,口の中の圧力を変えて,リードを変形させて,リードの共振周波数を変える奏法である。

何を言っているかというと,「吹音によりベンドさせる場合には,お腹の中に空気を沢山溜めて,口の中の圧力を高めて,風船を膨らませるように吹く。このことにより,吹音側のリードが変形し,共振周波数が下がる」。

一方,「吸音によりベンドさせる場合には,お腹の中の空気をできるだけ抜いて,口の中の圧力をで下げて吸う(健康診断において,肺活量測定をする際に空気を吐く前に,可能な限り空気をたくさん吸うのだが,そうすると自然とお腹が凹む。イメージ的にはあの場合である)。この時,単に肺で吸うのではなく,腹筋を使って吸うことが重要である

それでは,一般に言われる「舌の形」とはなんであろうか?

それは,主に,2番と3番の吸音による半音ごとの音階を出す(ドローベンド)場合において,本来は,口の中の圧力(もっと言えば,口と繋がっている食道や胃も)の圧力調整により,リードの変形を調整すべきであるが,それは,非常に難しいため,舌をあたかも圧力調整弁のよう使うのである。例えば,3番穴の吸音ベンドであれば,思いっきり吸ってしまうとラ♭(A♭)になってしまうため,舌の形(これは人によって異なる)により,舌の奥と舌の先の圧力を調整する。これを行うことにより,思いっきり吸った時よりも高いラ(A)の音を出る。これは,2番の半音ベンドソ♭(G♭)の場合も同様である。

私は,ベンドがリードの曲げ変形により音程を変えることまでは気づいていたが,口が出す雑音のシューとかシーとかいう音により振動がリードを振動させるものだと考えていた。

しかし,田中光栄氏のブルースハープ曲集に添付されている模範演奏CDの2番と3番の吸音による1音ベンドの音を聞くと,単音になっている。つまり,マイクにオシロスコープを繋いだら,サインカーブが現れるに違いない音である。シューとかシーとかいう音がリードを鳴らすのあれば,もっと雑音の多い音になる(オシロスコープに現れる波形はゆがんだものとなる)。それが,田中光栄氏の模範演奏にはない。そうなると,リードの固有振動(共振周波数と同じであるが,固有値となると,理論的に求めることになる)が起きていると考えざるを得ない。

模範演奏CD付 ブルースハープ曲集 ハマったら最後、ブルースハープに夢中 名曲の数々を楽しくマスター
田中光栄 編著
ドレミ楽譜出版社

そんなことを考えながら,2番穴と3番穴のドローベンドの練習曲の一つとして「仰げば尊し」を演奏していた。楽譜は,以下の曲集に掲載されている(92頁)。

入門から名曲まで ブルースハープベスト選集 改訂版
デプロ 編著
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「仰げば尊し」は歌詞「あおげばとおとし」の部分のメロディーが「ミミファソラソミレミファラソ」であるのである。上の楽譜では,4〜7番の穴を使うように書かれているのであるが,それを1オクターブ下げて演奏する練習である。歌えば簡単な曲であるし,曲全体をブルースハープにより演奏しても3〜7番の穴を使う分には,難しくはない(演奏センスのことは置いておいて)。

 

しかし,ブルースハープの1〜4番の穴を使って演奏しようとすると,2番と3番の吸音の1音ベンドであるファ(F)とラ(A)の音が頻発する。ブルースハープの初心者には難易度の高い曲となる。しかし,吸音ベンド(ドローベンド)の練習にはもってこいである。

 

一方,困ってしまう音がある。歌詞でいうと「はやいくとせ」の部分である。この部分のメロディーを手書きであるが楽譜として以下に示す。

 

「はやいくとせ」の「と」の音が1番吹音のド(C)よりも半音低いシ(B)である。この音は,出ない!と思っていた。そのつもりで,2番と3番のドローベンドの練習をしていたのであるが,ある時,シ(B)の音が出た。今では,だいたい,90%以上の確率で出せる。

例を動画で示そう。上の「はやいくとせ」の部分だけの演奏(と,いうか雑音に近いが)である。
仰げば尊しの一節〜1番吹音半音ベンド〜

 

これができると,他の音はどうなる?と考えたくなる。

そして,音符にすると以下の音は,不確実ではあるものの出るようになった。どうしても出ないのは,8番の吸音半音ベンド(レ♭=D♭)と10番の吸音半音ベンド(ラ♭=A♭)である。今,演奏に使えない音も含んだ上で,キーCのブルースハープを用いて以下の音階を出すことが可能になっている。

動画として示すと以下のようになる。音楽というよりほとんど雑音であるので,消音して,右側のiPhoneのクロマチックチューナーの音名に注目してほしい。
ブルースハープベンド音階練習

上記の動画により,1〜7番の穴まで,2オクターブにわたって平均律24+1音の25音階を出している。もちろん,8〜10番の吹音ベンドは全て半音ベンドもしている(10番は1音ベンドしているが)。

すなわち,ブルースハープは,練習さえすれば,3オクターブの平均律が演奏可能な楽器であると考えることができる。3オクターブはピアノに比べた音域は狭い。しかし,ギターの開放弦から12フレットまでを使う場合であれば,キーCの場合には,3オクターブとちょっとである。一つの楽器がカバーする音域として決して狭いとは言えない。

ただし,今の私は,1〜4番の穴を使って演奏するのでさえ,四苦八苦している現状である。しかし,8番と10番のドローベンド以外のベンドを可能になるためには,『舌の形』や『口の形』というものでは,実現し難い。

実現できたのは,上に述べた「口のなか(というか,食道と胃や体全体の力の入れ方を含めて)の圧力を変化させる」という「ベンドの原理」を実践しただけのことである。

この記事において述べた「ベンドの原理」は,片持ちはりの振動の基礎方程式(面倒なことに,偏微分方程式である)に,普通は,パラメータとして与えない,はりの初期曲率(リードのアゲミの最も簡単な数学モデル)を加えて,アゲミの隙間変化による流体力学のベルヌーイの法則を連立させて,その解を得れば良い。どれも既知の方程式であるが,連立させて解くとなると,少し面倒である。

もちろん,ベンドによるリードの共振周波数だけの変化の計算だけであれば,はりの運動方程式とはりの初期曲率の関係を得れば良く,これは,さほど,時間を要しない。検算なども考慮して,まともに私の頭が動くようになれば,16時間(つまり,8時間労働で正味2日)あれば,グラフまで示すことができるであろう。途中,困っても,3日間の作業(ここまでくれば,単なる作業である)で済むと思う。

ただし,今は,偏微分方程式を愉しむだけの心の余裕がない。

 

繰り返しになるが,

吹音ベンドは,風船を膨らませるために,お腹にたくさん空気を溜めて,口の中の圧力を高めて吹くこと」,

吸音ベンドは,吸音ベンドの逆の現象であるため,口の中の圧力を下げて,吸うこと。イメージは,肺活量検査の時に,体にたくさん空気を取り入れるために,お腹に力を入れて吸うのであるが,あのイメージである。」ただし,それを,演奏できる音にしようとするのだから,難しい。

なお,2番と3番穴の半音ごとのベンドは,平松悟氏がDVDで語るように,下の形を色々変えると,調整することができる。

私は,3番の1音ドローベンド(つまりラ=A)の時には,下を英語のLかRの音を出す形にしている。LとRの真ん中くらいと言ってもいいかも知れない。

このブログの先のことを記事にしようとすると,次は,リード変形による共振周波数変化の式から解を得たらになる。それは,だいぶ先になると思う。

 

なお,ブルースハープ初心者の私のような者にクロマチックチューナーは必須である。iPhoneアプリのKAWAIのものは使いやすいが,バッテリーの消耗が激しい。KORGの以下のモノは安価で,メトロノームも付いていて便利である。曲を演奏する前の,スケール練習(ブルースハープの練習にはスケーリング練習が要る)に適していると思う。

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なお,ブルースハープは魂の楽器とも言われる。まさしくその通りで,呼吸でリードを曲げて音階を作り出すためには,全身に集中しないと,音階を作り出せない。まして,曲の演奏には至らない。

クロマチックチューナーという便利なものがなかった時代に,音を作り出していたブルースハープの演奏者は,まさしく,魂を込めて演奏していたのであろうと思う。しかし,力学を仕事にしている私は,「魂」のままでは,納得いかないので,理屈を考えたのであるが,ブルースハープを演奏するためには,やはり「ソウル」が必要になる。それがないと,音が外れるのだ。

ブルースハープ ドローベンドの力学的考察(その2)

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2016/4/27追記※ブルースハープのベンドについては,当ブログの「ブルースハープ ベンド その 『 原理 』について」をお読み頂く方がわかりやすいかと思います。

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テキストを読む時間が無い方は、このパラグラフのテキストにリンクされている動画をご覧下さい。

先日、ブルースハープ ベンドの力学的なイメージを示したが、
我ながら、幾つか不備な点があった。

最も重要な点は、ブルースハープのリードの強制振動を考えたが、そのためには、強制振動を生じさせる外力が必要であるのに、外力が何かを示さなかったことだ。

その点を考慮して、再考してみた。

まず、ハーモニカを吸ったときに、何故下側のリードだけが振動するのか?という、基本的な問題から考えてみる。模式図を図1に示す。


図1 ハーモニカを吸ったときにリードとリード周囲の圧力分布について

図1は、ハーモニカの一つの穴の模式図であり、吸った場合である。ハーモニカを吸うということは、ハーモニカの外の圧力(Po)よりも、口腔の圧力(Pmouth1)の方が小さいということである。

このとき、上側のリードは下向きにたわみ、下側のリードは上向きにたわむ。たわんだ状態のリードを赤線で示している。

リード長手方向の圧力分布ΔPがどうなるかというと、アゲミによる隙間の形状から、固定端側の圧力は低く、自由端側のは圧力が大きい(ベルヌーイの法則による)。

上側および下側のリードがたわむと、上側のリードの長手方向の圧力分布は、自由端側の圧力がより大きくなる(隙間がふえるため)。一方、下側のリード長手方向の圧力分布は、自由端側の圧力が小さくなる(隙間が小さくなるため)。

リードから離れたところの圧力Poと口腔圧力Pmouth、および空気の速度uoとumouthは定常流的とみなせるであろう。

そうなれば、穴を吸ったとき、上側のリードのたわみは圧力PoとPmouthの圧力差により決まるたわみで静止し、振動しない。

しかし、下側のリードは、たわむとリード長手方向の圧力勾配が減るため、リードのたわみは、釣り合い位置に対して振動するようになる。

これが、ハーモニカの基本的な原理となる。

吹いたときは、口腔内圧力が大きく、外側を圧力が低いので、上側のリードのみ振動する。

さて、次に、ドローベンドのとき、上側と下側のどちらのリードが鳴るのかということについてである。このことについて、簡単な実験をしてみた。

3番穴のドローベンドを起こすリードを確認するために、まず、上側のリードをセロハンテープにより固定した(図2)。加えて、下側のリードの1、2、4、および5もセロハンテープにより固定した(図3)


図2 上側リードをセロハンテープにより固定した状態。


図3 下側リードをセロハンテープにより固定した状態。

その上で、3番穴を吹くことと吸うことを行った。

実験結果は、こちら。

事前に考えていた通り、下側のリードのみで、ベンドが起きる。

三つ目に、ベンドのメカニズムについてである。

問題を簡単するために、一自由度のバネマス系を考える(図4)。


図4 バネマス系

図4において、m、kおよびFはそれぞれ、質量、バネ定数、および、外力である。

ベンドにより、普通に吸ったときよりも低い音が出るのあれば、図4の単振動系において、質量mが増えるか、バネ定数kが小さくなるか、または、外力Fの周波数によるかのいずれかである。

前回のイメージは、外力Fによると考えた。しかし、そのために、外力Fを考えなければならない。つまり、最も重要な考察が欠けていた。

質量mの増加は、リードの長さも厚さも変化しないので、起きそうもない。

では、バネ定数kの変化は、どうか?普通の片持ちハリでは、バネ定数kの変化は起きにくい。

しかし、ハリが長手方向に湾曲してしていたらどうか?実は、ハリが湾曲していると、ハリの曲げ剛性が低下するのである。

それは、図5のようなプラスチックの定規を真っ直ぐ場合と湾曲した場合に片方を揺らしてみると、湾曲した場合には容易に変形しやすいということを実感できるはずである。


図5 プラスチックの定規の例

実際に、ハープの3番下側のリードが普通のときと湾曲したときでどうなるかを確認してみた。

普通のときのリードは、図6のようにそっている。


図6 リードの普通の状態

リードを縫い針とミニドライバーにより湾曲するように塑性変形をさせてみた(図7)。なお、これをすると、ピッチを戻せなくなるので、大事な楽器は使わないように注意して下さい。私は、捨てても良いハープで試しました。


図7 曲げて塑性変形による湾曲を作ったリード

実験結果は、こちら。

実験結果は湾曲した場合のみ示しているが、普通に吸った音が、本来ならBのはずがB♭になった。そして、ベンドをさせると、F♯に安定して下がった。

この実験結果を、模式的に図にすると、図8のように考えられる。


図8 ベンドのメカニズム模式図

図8において、口腔内の圧力Pmouth2は図1の場合よりも低い。つまり、リード付け根(固定端側)はたわみ易い。

そのため、自由端側は大きく曲がり、リード長手方向に、変形しやすい形に湾曲する。

加えて、穴圧力には小さな圧力変動ΔPmouth2が重畳している。このΔPmouth2は、英語のLやRを発音するときのような舌の形にして、息を吸ったときに出るホワイトノイズ状の「シュー」とか「シー」とかの音である。

この小さな圧力変動ΔPmouth2に含まれる周波数成分とベンドによるリードの剛性低下による曲げ共振がベンドにより起きる音であると推察できる。

吹いて行うベンドは、逆に穴の圧力を?を膨らませて高くし、ブーと鳴らすように吹くと、ベンドが起きる。

しかし、ドローベンドの場合に、穴の中の圧力を低くするすることは、難しい。

そのために、さまざまななことが言われている。

例えば、平松悟氏は、DVD「ブルースハープの嗜み」において、舌の形を変えてベンドを掛けると説明されている。

一方、α-ki氏は、ホームページ「ブルースハープ講座」において、「強く吸うこと」によりベンドを掛けると記している。

どちらも、事実であり、平松氏の説明は、LやRの発音をすることに重きを置いている。一方、a-ki氏の説明は、リードを変形させることに重きを置いている。

そのどちらもできれば、ベンドは可能である。しかし、二つの異なる現象を起こそうというのであるから、そうは簡単に行かない。

では、どうするか?

まず、Rの発音の巻き舌にして、ハーモニカ無しで息を吸ってみる。すると、口の両端から、シューという音が出るはずである。Lでも同様である。このとき、お腹に力を入れる感じが必要である。

その感じで、ハーモニカを吸ってみていただきたい。

それは、即ち、舌をノズルにして空気溜まりを口腔内に圧力の低い部分を作り、加えて、リードを振動させるホワイトノイズを作り出すことにより、変形したリードの共振を生じさせる。

なお、キーがCのハープの場合、3番の1音ベンドはしやすく、2番の1音ベンドはし難いと思う。その理由についても、いずれか機会があれば記事にしたいと思う。

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ブルースハープのベンドする力学について(リード長手方向分布荷重の強制振動)

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2016/4/27追記※ブルースハープのベンドについては,当ブログの「ブルースハープ ベンド その 『 原理 』について」をお読み頂く方がわかりやすいかと思います。

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〜〜〜この記事よりも、もう少しマトモな記事を書いてありますので、このパラグラフのテキストにリンクしている記事をお読み下さい〜〜〜

テキストを読む時間が無い方は、このパラグラフのテキストにリンクされている動画をご覧下さい。

一般にブルースハープ(図1)と呼ばれている十穴ハーモニカは、3オクターブをカバーする楽器である。

なお、ブルースハープというのは、あるメーカの商標なので、一般名詞である十穴ハーモニカやダイアトニックハーモニカと呼ぶべきであるが、教則本を見ても、ハーモニカメーカに関わらずブルースハープと呼んでいるので、この記事でも慣習に従い、ブルースハープとする。


図1ブルースハープの例(Tombo Major Boy)

しかし、ドレミファソラシドが揃っているのは1オクターブのみである。キーがCの吹音と吸音の並びを図2に示す。図2の穴の番号の4〜7は1オクターブ揃っているが、穴の番号1〜3はファとラ(FとA)抜けであり、穴の番号8〜10はシ(B)抜けである。

図2 ブルースハープの音の並び(キーC)

では、3オクターブをどうやって演奏するかと言うと、主に、穴の番号1〜3は吸い方で、穴の番号8〜10吹き方で、図2示す音よりも低い音を出す。例えば、穴の番号3は普通に吸えばシの音しか出ないが、吸い方で、シ♭、ラ、そして、ラ♭の音を出すように演奏する。穴の番号10は、吹くとドの音だが、吹き方でシの音を出す。

そのように、穴の番号1〜10までを吹き吸いすると、半音毎に3オクターブをカバーできる。

普通に吹き吸いする音よりも低い音を出すことは、ベンドと呼ばれる。特に、吸音による場合は、ドローベンドと呼ばれ、ブルースの演奏には欠かせない演奏技術である。

そして、ブルースハープを手にして初心者(つまり、私自身)の最初で恐らく最大の難関がこのドローベンドである。

なぜなら、普通に吸っても音が下がらないのだ!!

ブルースハープの教則本の解説は、ベンドに多くを充てている。

しかし、不思議なことに、ベンドに関する力学的な考察と言うのは、あまりない。というか、私がササっと探した限り、ネットや教則本には書かれていない。

なので、ベンドができるようになったら、その力学的なことが気になりだしたので、考えてみた。

なお、ここでの考察は、アイデアというか、イメージなので、ベンドの数学モデルを提示できるまでには至っていない。

ハーモニカは、リードを振動させて音を出す楽器である。

ブルースハープの吹音のリードは上にある(図3)。そして、吸音のリードが下にある(図4)

図3 ブルースハープの吹音リード(上側)

図4 ブルースハープの吸音リード(下側)

ハーモニカのリードは、材料力学的には、片持ちハリとしてみなせると考えられるので、普通に鳴らす時に出る音は、ハリの曲げ一次振動である。ハーモニカのカバーを外して、リードを針で持ち上げて自由振動させたときに、クロマチックチューナーで音程を確認すると、曲げ一次そのものの音程を共鳴無しで出ている(ハーモニカはカバーが共鳴器である)。

この時の空気の流れを、リードとハーモニカのボディ(図1、3、および4の黒い部品)の断面として考えると、ハーモニカの穴を吸った場合には、図5のように空気が流れる。


図 5 ハーモニカを普通に吸ったときの空気の流れ

図5で起きている現象は、ボディとリード自由端の間の隙間がスロートとなっているイメージである。流体力学の有名なベルヌーイの法則から、スロートでは圧力低下を起こす。そして、リードは、わずかなソリ(アゲミと呼ばれる)があり、スロートでの圧力低下とアゲミによって、自由振動が起きる。これが、普通に吸ったときの現象である。このことは、ヤマハの音楽全書にハーモニカの原理として解説がある

しかし、ヤマハの解説のみでは、ベンドの原理はわからない。

ベンドの説明として、吸うと、上側のリードがなるという説明を見かける。しかし、カバー無しで、上側のリードを指で動かないようにしても、吸うとベンドは起きる。また、1番の穴の吹音のベンドにより、半音低いシの音を出すことが可能であるが、ベンドにより上下反対側のリードが鳴るという説明からは、この現象を力学的に説明できない。

つまり、吸音のベンドは、下側のリードで、吹音のベンドは上側のリードで起きる現象と考えられる。

そして、ベンドの不思議なところは、ある音程の範囲において、周波数が連続的に変化することである。ハーモニカの普通の音程は、リードの曲げ一次共振周波数により決まるので離散的である。

しかし、例えば、3番号穴の吸音ベンドは、シ〜ラ♭さらに、ソ近くまで変化する。それを、演奏者が、調整する。それが難儀なのである。

ここで考えてみる必要があるのは、ベンドにより出す音程は、リードの曲げ一次共振よりも低い音(周波数)ということである。

ハリの共振周波数の計算式を知っている人ならば、曲げ一次よりも低い周波数に、ハリの共振周波数がないことは知っているはずである。

と、なれば、曲げ一次共振周波数よりも低い周波数において、かつ、連続的に周波数が変化する現象は、どのようなことがかと考える必要がある。

そう考えて、カバーを外したハーモニカを吸ったり吹いたりしていてイメージしたのは、図6のような現象である。


図 6 ベンドのときにリードに負荷される荷重(圧力)のイメージ

図5と6の違いは、リードの根元(固定端)から先端(自由端)まで空気が押し上げるかどうかというイメージの差である。

ベンドをすると、リード(片持ちハリ)の板厚方向に根元から先端まで圧力がかかり、まさに、リードを曲げる(ベンド=bend)。その曲げ方により、リードに強制振動が起きる。

最初は、カルマン渦による振動ではないかと考え、スロートを流れる空気のレイノルズ数を計算してみたが、せいぜい、数十〜数百のオーダーであり、カルマン渦が影響しそうではない。

図6のリードへの圧力のかかり方は、ハリの分布荷重による強制振動発生とみなすことができる。これであれば、リードの曲げ一次共振周波数よりも低い周波数において、連続的に周波数が変化する現象の説明にはなりうる。

これを実験的に評価しようとするならば、レーザー振動計により、リードの変形を直接観察することが有効であろうが、まさか、私が個人でそんなものを持っているわけもなく、実験のしようがない。

これで、なんとなくベンドの力学的なイメージはできたので、安心して練習ができる。

なお、考察が間違っていたら、ぜひ、ご指摘並びにご教示のほど、お願いします。

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